コラム「暮らしを彩る」


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vol.6 季節を先どる演出

すすき 店先に季節の便り「マツタケ」が登場しています。味覚を楽しませる演出として、日本料理の専門店では、いわゆる走りのものを食材に使うことが多いようです。先日、広島市近郊の料亭で、その季節に先駆けた演出、洗練されたもてなしに、充分満足することができました。

案内されたコーナーには、近くの山で採られた秋草や枝がさりげなく入れられて、さわやかな秋風を運んでいます。席につくと、ベージュ色の揉み紙の和紙がきれいに三つ折りにたたまれて、れんが色の帯で留められたお品書きがありました。食事するものにとってこの進行表はとても大切なものです。内装や調度品のバランスも、食事を美しく味わうためには欠かせない道具立て。ここで、仲居さんの心配りあるサービスが実にタイミングよく、メインである料理を心ゆくまで味わうことができたのです。

秋の七草のひとつ、ススキ。子供のころ、お月見のためのススキを採りに行って、手足を傷つけて帰ってきたものでした。今年は、私は採りにいくことができませんでしたが、友人が山に採りに行くと、その近所の子供たちが探しにきていたそうです。「穂の出たススキが見つけられない」と話かけられたので、友人が山奥から採ってきたものを分けてあげたそうです。その子たちはとてもうれしそうに、笑顔でいつまでも手を振って見送ってくれたとのこと。
ススキのとりもつ縁で、子供たちと会話できるのですから、日本の風習を伝承していくことの大切さを感じます。

最近は、ついメールで簡単にやりとりをしがちですが、秋風の中、便りを出すのに、ワレモコウや水引など、趣のある挿絵のはがきで、遠く離れた知人との通信を楽しめるのも、これから夜長となる季節にはすてきなコミュニケーションとなるのではないでしょうか。そんな時、自分が採ってきた秋草の押し花を封筒にしのばせるのもよいかもしれません。


SOPHIA代表取締役 中田 満美

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