コラム「暮らしを彩る」


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vol.14 高齢者へ配慮を

公園を歩くと、足元には鈍(にび)色に変化したぬれもみじが重なり、まるで落ち葉のじゅうたんの上を歩いているよう。本格的な冬への序章を奏でています。
健やかな高齢化社会づくりの第一歩として、国や自治体は積極的な政策をスタートさせているようです。しかし、身近に高齢者がいる人は別として、まだ多くの人々は高齢化社会を実感できていないように思われます。
それだけに、サービスを受ける側にとって何がキーポイントなのかを、知る必要があるでしょう。

ある建築家がプラハの国際会議に出席した際、同業のチェコスロバキア(当時)の友人宅を訪問したリポートは、とても参考になると思いますので、紹介します。

その友人は六十歳代後半の夫婦。通されたキチンは、それまでくつろいでいたリビングの欧州宮廷風とは一変して、赤を基調に黒と白を配した個性的なインテリアだったのです。
それは友人の母親が、八十歳前後でデザインしたということ。キチンのコーナーや、壁から突き出た部分、よく使うスパイス棚や足のひっかかりやすい部分は、すべて赤で塗られていました。
「なぜ老人が赤を」と不思議に思った建築家は、のちに加齢による色の見え方の変化を考えての、カラー計画であったのに気づくのです。
人の目は五十歳ごろから老化が始まり、白内障化が進んで行きます。黄色が白と同じように見えてくるのです。つまり、警告的に使われる黄色と黒のしまは、白黒に見えてしまうので、とても危険なのです。逆に、赤やピンクはあまり変化しない色なので、先のキチンにおける赤の使い方は、安全にキチンを使うために、とても有効な方法だったわけです。

高齢者には落ち着いた色を、ということでブラウン系でまとめることが多いのです。床と壁には必ず色や明るさでコントラストをつけたり、段差には赤いテープを張るなど、とっさの避難時に、思わぬけがなどしないように配慮したいものです。


SOPHIA代表取締役 中田 満美

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